「判官びいき」を英語で言うと

2012.08.28 Tue

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「判官びいき」を英語で表現

米国で乗馬、ホース・トレッキング 「鵯越(ひよどりごえ)の逆(さか)落とし」からのつづきです。

黒田裕樹の歴史講座の黒田裕樹さんから、こんなコメントがありました。
「鵯越の逆落とし」ですね。義経は地元の猟師から「この急坂は鹿なら通る」と聞いて「鹿が通れて馬に通れないはずがない」と言って精鋭全員が馬に乗って駆け降りたとか。
この奇襲のお蔭で一の谷の戦いで源氏が大勝利するのですから、義経はまさに戦の天才でしたね。



僕は、
なるほど。「鹿が通れて、馬に通れないはずがない」って考えるところが、すでに、凡人(ぼんじん)じゃないですね。鎧(よろい)もつけてるわけだし。ものすごく大変だったと思います。
     ・・・中略(ちゅうりゃく)・・・
昔の話ではあるけれど、義経には、衣川(ころもがわ)を逃(のが)れ、北へ旅立っててほしい、衣川の合戦(かっせん)は芝居であってほしい、って思います。これを「判官びいき」っていうのかな。

って、コメント返信を書いたんですが、書いてて、ふっと思いました。

「判官びいき」って、英語では、何て言うのかな?って。

そういえば、一言であらわす言葉としては英語で聞いたことないなあって思ったので、さっそく、調べてみた。

Learning Through History Magazineの、2006年 March/April号が、Medieval Japan (中世の日本)の特集をしてた。その中に、「判官びいき」について書かれたものがあった。

紹介文(英語)には、こう書かれている。
 
HOGAN BIIKI: SYMAPTHY FOR THE UNDERDOG
by Virginia Stevens

Read about the exploits of a young military genius named Minamoto Yoshitsune, and how his life coined a new expression still used in Japan - hogan biiki - meaning "sympathy for the underdog."


ちょっと話がはずれますが、上の英文、coined っていう言葉を使ってますよね。これ、カッコいい表現だなって思いました。coin には、硬貨(こうか)、コインっていう意味(noun 名詞)だけじゃなくて、mintと同じく、硬貨を鋳造(ちゅうぞう)するっていう意味(verb 動詞)があります。(mint という単語については、こちらにも少し書いてあります。ペニーよ、さらば!Good-bye penny!)、そこから広がって、(mintと同じように)、「(新しい言葉を)つくりだす」っていう意味(verb 動詞)もあるからです。ここはやっぱり、create とかじゃなくて、coin を使って表現した方が、だんぜんカッコイイと思います。

だから、上の英文のだいたいの意味を書くと、こんな感じだと思う。

判官びいき:敗者への同情
バージニア・スティーブンズ

若き、戦(いくさ)の天才、源義経の偉業(いぎょう)について読み、義経の人生がどのようにして、「判官びいき」(その意味は、「敗れた者への同情、あわれみ、思いやり、共感」)という新しい表現(今でも、日本で使われている表現)を生み出したのか


つまり、ここでは、「判官びいき」は、sympathy for the underdog(敗者、弱者への同情、あわれみ、思いやり、共感)って訳されてる。

underdogというのは、そんなにしょっちゅう使う表現ではないけれど、たまには使うこともあるっていう感じの単語。「負け犬」、「敗者」、あるいは、「弱者」っていう意味。

例えば、underdog を使って、僕が作ってみた英文。
 
I wish that team A wins because it is always the underdog.

だいたいの意味を書くと、

僕は、Aチームが勝つといいなって思う、だって、いつも弱いから(今度は勝ってほしいな)。


I wish that the underdog team wins.
っていう文章でもいいと思う。



でも、「判官びいき」という言葉は、単純に、「敗者(弱者)に同情する」っていう意味ではないはずだ。
だから、これを、英語にするって、とても難しい。

もっと調べてみた。

The relationship between literary and "official" historiography is closely related with the Japanese notion of the "nobility of failure." The ethos of admiring those who fail, even today, permeates the Japanese character. There is even a special word in Japanese -hangan biiki (or hogan biiki) - to express this concept. Hangan refers to those of official rank in old Japan, and it alludes specifically to the fitst shogun who unified Japan in the twelfth century and established the Kamakura government. Ivan Morris introduces this story in the fifth chapter of his book.
Western Historical Thinking An Intercultural Devate Edited by Jorn Rusenの137ページから引用。Masayuki Sato先生が書かれた部分かな。)

メモ
最後の方に出てくる、Ivan Morris博士は、ロンドン生まれのイギリス人。アメリカ人父とスウェーデン人母の間に生まれた。ハーバード大学やロンドン大学で学び、コロンビア大学で日本文学を教えた。1945年に広島を訪れた最初の外国人通訳者の一人。三島由紀夫の友人。

最後に出てくる、his book は、Ivan Morris博士の書いた、「The Nobility of Failure: Tragic Heroes in the History of Japan」を指している。もっと前から読むとわかる。

Ivan Morris博士の本は、これ。
The Nobility of Failure:Tragic Heroes in the History of Japan Ivan Morris

これ、どうも、かな~~~り有名な本みたいなんだけれど、今は、手に入れにくそう。
調べてみたら、日本語に訳したものもあったんだけど、こっちも、今は、手に入れにくそう。

高貴なる敗北―日本史の悲劇の英雄たち
アイヴァン・モリス (著), 斎藤 和明 (翻訳)

図書館なら、あるかも。




で、Ivan Morris博士の本のタイトルにあった、The Nobility や、Tragic Heroes という言葉は、ヒントになるなって思った。

「判官びいき」という言葉は、
genius (天才)で、talented な(才能のある)人、popular な(人気のある)人、noble な character (高潔な人柄)の人、つまり hero (ヒーロー)の tragedy(悲劇) ってことで、後世(こうせい)の人の、「才能あふれるこの人には、もっと活躍してほしかった。おしい人をなくした」っていう気持ちの表れとしてできた言葉のような気がする。そして、今では、亡くなっていない場合でも使えるみたいだ。



これらをふまえて、僕なりに、「判官びいき」を、英語で説明してみた。こんな感じでどうかな?
 
Hogan Biiki (or Hangan Biiki) is defined as: people’s very sympathetic feeling towards a hero with admirable traits and characteristics (such as being genius, talented, popular, and noble), who is killed tragically or defeated at a young age. People would wish that one’s potential could have been reached fully if the hero did not have a heartbreaking downfall.

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Re: タイトルなし

黒田裕樹さんへ

> 判官びいきは日本人の特性ですが、その背景には「恨みを呑んで死んでいった人間のタタリを封じるために生きていることにする」という思想もあるようです。
> 藤原氏による讒言(ざんげん)で流罪となり、その地で亡くなった菅原道真が雷神となって京で大暴れして、結果的に醍醐天皇をショック死させたという伝説もありますからね。

なるほど。
そういえば、陰陽師(おんみょうじ)という映画を、日本語で見たことがあります。
安倍晴明(あべのせいめい)だったかな。

> なお、ご紹介いただいた書籍ですが、アマゾンだと古書でも10,000円を超えるみたいですね。読みたいのなら図書館で探さないと…(´・ω・`)

そうなんです。かなり貴重な本みたいです。

> あと、これはオマケですが、菅原道真は雷神となってタタリをもたらしましたが、これが元々の神であった「火雷天神(からいてんじん)」と結び付いたことで、道真のことを以後「天神様」と呼ぶようになったそうです。また、雷神となった道真の怒りが「天に満ちた」ことから、祀られている神社が「天満宮」と呼ばれるようになったとか。

なるほど~~~~(@@)。
それで、天満宮って呼ばれるんですね。

僕の頂いたおふだにも、天満宮って書いてあります。
今年、受験生だったので、お参りに行ったんです。
絵馬もおさめました。
 
「武士道」に、菅原道真の和歌が出ていました。
菅原道真もいずれ取り上げてみたいテーマです。

Edit | 2012.08.29(Wed) 16:28:31

黒田裕樹 >>URL

拙コメがお役に立てて光栄ですm(_ _)m

判官びいきは日本人の特性ですが、その背景には「恨みを呑んで死んでいった人間のタタリを封じるために生きていることにする」という思想もあるようです。

藤原氏による讒言(ざんげん)で流罪となり、その地で亡くなった菅原道真が雷神となって京で大暴れして、結果的に醍醐天皇をショック死させたという伝説もありますからね。

死んだらタタられるから生きていることにする→というよりタタられたら困るから生きていてほしい、というべきかな(^^ゞ

まぁ、日本人には死ねばみな神様仏様という多神教を信じる風俗もありますし、島国で基本的に外敵が襲ってくるということもなかったので、このような考えが広まったとも言えそうです。

ちなみに私は好きですよ、判官びいき。「敗者の美学」に酔いしれるのも日本人ならではです。

なお、ご紹介いただいた書籍ですが、アマゾンだと古書でも10,000円を超えるみたいですね。読みたいのなら図書館で探さないと…(´・ω・`)

あと、これはオマケですが、菅原道真は雷神となってタタリをもたらしましたが、これが元々の神であった「火雷天神(からいてんじん)」と結び付いたことで、道真のことを以後「天神様」と呼ぶようになったそうです。また、雷神となった道真の怒りが「天に満ちた」ことから、祀られている神社が「天満宮」と呼ばれるようになったとか。

長文失礼しましたm(_ _)m

Edit | 2012.08.28(Tue) 15:41:49

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